「鈴様の中での私は、ずいぶんと性格が悪いんですね」
「違った?」
むしろ図星でしょ、そういう意味を込めて沙希を見つめたら、沙希はふっと口元を緩めた。
「秘密です」
そう言って人差し指を口元に当てる姿すら決まってしまうんだから悔しい。
誰だよ、この性格悪い男に、無駄なまでの顔を提供したのは。
(いや、顔がいいから性格歪んでるのか?)
ぐ、と黙ったあたしを見て、沙希はまたいつもの笑みを顔に作った。
「SPは執事ではありません。黙って見守るのが仕事ですよ」
そっか、と流されそうになったけど、
その言葉の矛盾に気付いたのは車が神谷家の門をくぐった後だった。
【黙って見守るのが仕事ってただの言い訳じゃん】
(レポートの時は人が苦しむ顔を見て生き生きとしてたくせに!!!)
(「本当に気付くのが遅いですね」)
(「とりあえず、その顔に書いてある“バカ”って文字消してよ」)