「鈴様」
こんなお嬢様校の中で走る人なんていないんだろう。
誰もがぎょっとした目であたしを見ていたけど、わき目も振らずにあたしはがむしゃらに走った。
沙希に声を掛けられて我に返った時は校内にチャイムが響いていて、廊下には誰もいない。
ここがどこかさえ、分からない場所にいた。
「・・・なんか、あたしばっか、浮かれてたんだね」
呟いたらその言葉はすごく重く胸にのしかかる。
確かめるように胸に目を落とせば、金糸刺繍のエンブレムが目について余計悲しくなった。
「鈴様」
沙希はまたあたしの名前を呼ぶ。
ゆっくりと顔をあげたら、沙希は珍しくまじめな顔をしてあたしの顔を見つめてた。
「私は、ずっと貴方と野々宮様の関係を見てきました」
「・・・」
「慰め、と捉えられるかもしれませんが、お二人の関係は決して作り物じゃなかったように思います」
作り物、それは神谷の名前をはさんだ関係のことだろう。
まったく動かずに沙希の目を見つめていると、沙希は言葉をつづけた。

