下心、という言葉にののかちゃんの身体が大きく反応して、そして目が見開かれる。
そのリアクションを図星ととらえたのか、宇佐美さんはキレイな唇に弧を描いた。
「知ってるのよ?貴方のおうち、今ずいぶん苦しいみたいね?」
「・・・」
「神谷家に取り込もうとしたんでしょうけれど、その作戦失敗よ?
彼女は生粋の庶民。神谷となんの関係もないんだから」
その言葉に、あたしの心は急速に冷めていった。
けれど同時に、そっかと納得するあたしもいる。
あたしに近づいてきたのは、“神谷”の力───
信じたくなかった。
けれど、なんでののかちゃんは私を選んでくれたんだろう、という疑問はストンと悲しいくらい答えが出て。
「・・・ごめん」
なんだかいたたまれなくなって、立ち上がる。
そしてののかちゃんの顔も見ずに一言だけ呟いて、教室から飛び出した。
まるで宇佐美さんからも逃げているようで少し悔しかったけど、
あたしが逃げたかったのは宇佐美さんじゃなくてののかちゃんからだった。
もしもあのいつも見ていた笑顔がない顔で、肯定されたら、あたし───

