あたしはそれでもなんだか申し訳なくて、急いで話題を逸らす。
「野々宮さんってさ、みんなからなんて呼ばれてるの?」
あたしの質問に、野々宮さんは「え?」と不思議そうな顔をしてシャーペンを机の上に置いた。
「なんてって・・・」と反復して思い出すように宙を見上げてから、あたしの目に視線を戻す。
「クラスの子は、みんなお互い苗字で呼び合ってるけれど?」
「は?苗字?」
今度はあたしの顔がクエスチョンマークに満ちる。
野々宮さんはそれが当然のように、こくんと頷く。
むしろ、あたしが驚いていることに対して戸惑いがあるかのようにさえ見えた。
あたしがすぐに「そんなのおかしいよ!」と言えば、眉を下げて彼女は首をかしげた。
「おかしいの?」
「そうだよ、友達同士なのにそんな距離感あるって寂しくない?」
「友、達・・・」
口の中で小さく反復して、野々宮さんは「そんなこと考えたことなかった」と苦笑した。
だったら考えよう!と勝手に自己完結してあたしは「そうだなぁ」と腕を組む。

