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図書館で、あたしたちは隣同士に座りながら資料に目を通す。
ちらり、と横目で野々宮さんを見れば、サラサラの髪の毛が風に躍らせながらノートの上でパールピンクのシャーペンを滑らせていた。
彼女は特別な美人ではないけど本当に言動の一つ一つがかわいかった。
あたしが高いところの本を取ったり、重い本を何冊も重ねて持ってたり、
そんな当たり前のこと一つ一つに「真城さんってなんでもできるのね」と笑うんだから。
逆にこっちが気恥ずかしくなったくらいだった。
決して例の宇佐美さんとかいう女の子ほど絵に描いたようなお嬢様らしい口調じゃないけど、
漂う気品やゆったりとした雰囲気やおしとやかさが、“深窓のご令嬢”という言葉を彷彿とさせる。
「何?」
ふ、と顔を上げた彼女は髪を耳に掛けながらあたしを見て微笑んだ。
女のあたしから見てもどきっとしてしまうくらい、その流れる仕草はキレイで。
「ごめん、視線気になったよね」
いくら自分と違う世界の人だからって不躾に見つめすぎてた。
そのことに気付いて慌てて謝罪すれば、野々宮さんは「大丈夫よ」とまたにっこり笑った。

