先生の説明が終わると、あたしたちはまた席を立つ。

図書館に移動して文献検索をするらしい。

すでに荷物がまとまっていた彼女と違ってあたしは支度に手間取ってしまったけど、彼女は「待ってるね」とまた穏やかに微笑んだ。



「・・・私、真城さんとずっと話してみたかったの」



教室を出る際に、ポツリと彼女は言った。

え?と振りむくと、「宇佐美さんたちが怖くてなかなか近付けなかったんだけどね」と少しきょろきょろした後に声を細める。



「でも、勇気出してみて良かった」

「そ、っか・・・」



あの冷たいクラスの中でそう思ってくれている人もいたなんて、ちょっとくすぐったい。

“お嬢様”って枠で一括りにしていた視野の狭い自分を反省しなきゃ。

それと同時に、「どうだ!」という意味を含めてどや顔で沙希に振り返る。

彼が恐ろしいくらいお美しい笑顔で、親指だけ立てた右手の握りこぶしを作り、その指先をゆっくり下に向け出したから光より早いスピードで顔を戻した。



「え、真城さん、どうしたの?」

「いや、別に・・・ははは・・・」