いつも授業中は一切関わろうとせず、さすがトップクラスのSPと言いたくなるくらい上手く気配を消している沙希。
あたしでさえ、時々いることを忘れてしまうんだから、その徹底ぶりといったら悔しいけどプロ。
そんな彼がわざわざ話しかけてくるなんて、相当不憫に見えたに違いない。
「ちょっと無理かも」
さすがに、こうもあたしが一人身であることを露呈させようなんていじめにしか思えないんですけど。
世界史のレポートを二人一組で作成しろ、という先生からの指示で、教室の人間は一斉に席を立ち、次々とペアを組んでいく。
あたしの返事を聞いた沙希が苦笑したのを、振り向かなくても震える空気で感じた。
そのまま沙希は一歩身を引いてまた空気に同化する。
どうせあたしに相方はいないだろう、と席から腰をあげることもせずに、あたしはもう一度ため息をついてざわめく教室を眺めることに専念した。
「あの・・・・・・さん?」
余る人、可哀想に。
こんなにも空気扱いされてるあたしとペアなんてさ。とちょっと不貞腐れてみる。
いや、嘘だよ?いまさら凹んだりしないし。いつものこといつものこと。

