〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―



ガタッ



わたしが勢い良く立つと、周囲の視線はギターの人からわたしに移った。



わたしはサイドの壁をさわり、素早く壁の質を確かめ、スピーカーの位置を変え始めた。



さっきの先生が出てきて、わたしを止めようとする。


室内は、いっきにざわついた。




「キミ!!

なにしてるんだ、止めなさい!」



うるさいなぁ。



「…。」



わたしは黙々とスピーカーの位置を変えていった。


しかし、わたしが変えたところを先生が戻そうとする。


「…触らないで!」


つい、大きな声が出た。


そして、先生の手が止まる。

やっとおとなしくなったか。



そしてわたしは、ギターの人の方へと向かった。


「え、ちょ…なに!?」


「…ギター。」


「は!?」


「ギター、見せてください。」


「な、なんで…っておい!!」


わたしはしびれを切らし、強引にギターのコードに自分の目をよせた。


…やっぱり、このコード切れかかってる。


だから音ちっちゃくなったんだ。



わたしは隣のコードがあるであろう部屋に向かい、コードを取ってくると、ギターのコードをとり、付け替えた。


「…よし!!

ギター、ならしてください。」


「え?────♪~♪~…すげぇ!!直った!!」


そりゃあ…直したんだから。




「ねぇ、キミ名前なんて言うの!?

すごいね、なんで直ったの!?」



…そんなこともわからないのか…。


「ほら、皆さん演奏待ってますよ?

─────…ね、皆さん!!」



わたしが他の体験入学にきた子達に問いかけると、すぐに拍手が帰ってくる。



この人たちも、もともと下手なワケじゃないのだ。



「それじゃあ、最後の曲です。

この歌は、今YouTubeで人気急上昇中の《わふわふ》さんの曲です。

皆さん、ご存知だと思います!!


口ずさみながら聞いてください!


最後まで聞いてくれて、ありがとうございました!!

それではいきます!!

───────…『折り花』」




『♪~…♪♪♪~…♪~♪~♪~♪~♪~』



「きゃぁぁぁぁぁあああ!!」



…この悲鳴は悲鳴ではなく、黄色い声的な…ものでしょうかね。


そうか、こんなにも人気だったのか。



…わたし。




『わふわふ』は、つまりわたしだ。



スタジオで曲をとり、YouTubeに投稿。

それはわたしの趣味のようなものだった。

ソレを繰り返すうち、人気が出てきちゃって。



この人達が必死に歌っているのは、わたしの曲。


そう思うと、とても嬉しかった。




歌いたくて、身体がうずく。








気がつけばまた、席を立っていた。