何故、泣くのだ。


「ところで、望月くん。
君が部屋をとったという宿屋は
どちらさんと言ったかな?」

近藤は先程まで引き締めていた
顔を少し綻ばせ、私に訪ねる。

「四国屋です。」

私は一言返事で答える。

「ならば、君が態々宿屋へ
出向く必要はないだろう。
齋藤くん、お願いしてもいいかな?」

始めから今まで一言も言葉を
発しないこの男が斎藤 一、か。

「御意に。」

近藤の言葉をどう理解したのか
私にはさっぱりだったが、
彼は小さく返事をすると部屋を
出ていった。

「四国屋には何日も前から
監察方の人間が張り込んでいたから
恐らく何か情報をつかんでいるだろう。」

腕を組み直しながら近藤はそう言った。

「だから、望月くんは
佐之と一緒に呉服屋にいってくれるか。
やり取りは全部佐之がやるから
君はただついていって呉服屋の主人の
言い分が間違っちゃいないか
聞いていてくれ。」