何故、泣くのだ。


「あっ、…!」


突然声をあげたのは
藤堂だったが、
藤堂以外の人達も気づいたらしい。

「そう、街で情報収集をしていたらしい
長州の人間たちにご主人が奇妙な
羽織を召した若い男がいたと
おっしゃったのだそう。」

その場にいた人間の殆んどが
納得したような顔をした。

「その夜、外の空気が吸いたくなって
外に出たんです。
川沿いを歩いていたのですが、
ふと、人の気配がしたので、立ち止まって
みたんです。そしたら、気配も
止まるものだから、自分が追われている
と理解しました。」


「急いで宿に戻ろうとしたのですが、
ここの土地勘は全くないし、
凄く焦ってしまったようで気づいたら
行き止まりの路にはいっていました。
そこで、奴等に迫られたとき
殺らなければ殺られると自分を脅して
覚悟をしたところで記憶がないんです。」


一通り話終わったところで、
私は息をついた。

「私が覚えているのは、
これだけです。」

と、締め括る。


「なるほど、なるほどな…」

土方はそう繰り返し呟く。