何故、泣くのだ。




それから、私が何をして、
どうなったのか。

全くといっていいほど
何も覚えていることはなかった。

ただ気づいたら身に付けている
着物が着流しに変わっていて。

どこか知らない邸宅の一室で、
布団に横たわっている自分がいた。


「ここは………」

辺りをキョロキョロと見回していると、
部屋の外から何やら騒いでいる声が
聞こえてきた。

「あっ、ちょっ!おまっ。
いって!あ、わかったっ!って!」

外とこの部屋を隔てている障子に
一つの人影がうつった。

スパッ………!

突然、襖が開いて、
一人の男がじたばたと暴れながら
入ってきた。

射し込んできた日光の逆光で、
シルエットだけが解るくらいだったが、
部屋に入ってきた男の身からなにかが
離れて、こちらに飛んでくるのがわかった。

胸元に飛び込んでくる何かをとりあえず
上手く受け取ろうと、手を伸ばす。

ポスッ。と見事に私の手にダイブした
モコモコの何かは、

間違いなくユキだった。

「ユキっ………」

「ゥニャア~ン」

可愛い鳴き声をあげながら私の手に
頬をすりよせる。


「よっぽどなついてるんだなぁ。」

さっきの男が口を開いたので、
顔をあげた。

改めてしっかり見てみると、
男というよりかは、少年のようで、
細っこいスラッとした手足と、
高く結っても腰まで垂れる艶やかな
髪の毛がとても印象的だった。

私を感心するようにボーッとこちらを
眺めていたので、今度はこちらから
声をかけてみることにした。