何故、泣くのだ。



その夜、ワタシはあの奇妙な呉服屋の
ご主人の勧め通りに四国屋にお邪魔になった。

四国屋のご主人もなかなか親切で、
ユキの事を話したら、

「あぁ、その分のお勘定はいりやしやせん。」

といって、小魚を焼いたのを与えてくれた。

どうやら、こんな上品な見たくれの猫は
そうとう珍しいらしくて、
かなり可愛がってくれた。



夜も大分更けた頃、
私はふと思いついて散歩に出ることにした。

下へ降りると未だに酒を酌み交わしている
侍さんや近所の人達が

「外へ出るのなら充分に気をつけろや、
若いの。最近はこの辺も物騒じゃて、
どこで、血潮をふかされるかわからんぞ!」

と大声で注意してくれた。

「お気遣い感謝します。」

私はお礼を言って、外に出た。

これでも小学校と中学の途中までは
剣道を習っていて、関東大会までは
行っていたし、大丈夫でしょ。

しばらく歩くと人気のない静かな川岸に
出くわした。穏やかな川音がして、とても
和やかだった。

ユキをそっと地面に下ろしてやると、
嬉しそうにひょこひょこと歩いてまわった。