「そうでらっしゃいましたか。
八十文もあれば、この町じゃ五日は宿が
とれますよ。ほら、丁度向かいの少し
行ったところに四国屋といってちょいと
なの知れてる宿がありますから。
そこになさいな、若旦那。」
怪しく思われないか冷や汗をかいたけど、
男は親切におすすめの宿まで紹介してくれた。
ところで、
四国屋というのは聞いたことがある。
何処でかはおぼえてないけど、聞き覚えが
確かにあった。
「四国屋の主人は讃岐の出身で、とても良く
世話を妬いてくれますよ。
池田屋もあるがぁ、あすこはちと遠いし、
主人が会津の出というからぁ、柄の悪い
武士ばかりですや。」
「そうですか、ありがとう。
それでは、四国屋にお邪魔しようかな。
ご主人、世話になりました。」
「いぃえぇ。またどうぞ、ご贔屓に。」
男に送り出され、私は八十文を懐に忍ばせ、
四国屋を探すことにした。
会津、讃岐……
なるほど、既に藩を置く時代なわけだ。
つまり、今は江戸時代とよんで間違いない。
それに、池田屋と四国屋………
絶対どこかで聞いたことがある。

