4離陸

「JA3021、こちらはレディオ管制です。滑走路06を使用してください。
気圧は1023ヘクトパスカルです。110度の方向から8メートルの風が吹いています。タクシーダウン(走行)してください」

「レディオ管制、JA3021です。滑走路は06、気圧は1023ヘクトパスカル、風は110度の方向から8メートルを確認しました。これからタクシーダウンします」

 保奈美はエンジンのパワーを上げ、小型機飛行機を誘導路から滑走路の手前まで走行させると、再びレディオ管制に連絡しました。

「レディオ管制、JA3021です。離陸準備完了しました。左旋回で出発し、高度1000メートルまで上昇します」

保奈美はスロットルレバーを目一杯上げ、大空に向けて離陸して行きました。


 次の日も、保奈美は飛行場に来て、訓練飛行の準備をしていました。

フライトバッグを手に持った保奈美が小型飛行機の操縦室に入ろうとしたとき、保奈美のフライトジャケットからひらひらと舞い落ちたものがあります。

一枚の白いハンカチでした。

それに気がつかずに保奈美は小型機のエンジンを始動し、スポットから離れて誘導路をゆっくりと走行すると、滑走路の手前で停止しました。

それを見ていたなおっちは、そのハンカチを口にくわえ、滑走路の方に向かって走り出しました。

なおっちは保奈美の小型機を追いかけたのですが、口にハンカチをくわえているために、早く走ることができません。

なおっちはとうとう走るのをやめてしまいました。

保奈美の乗った小型機が爆音をのこして大空に舞い上がってしまったのです。

なおっちはその白いハンカチのそばから離れずに、草むらの中でじっとたたずんでいます。どうやら、保奈美が戻ってくるまで待つつもりのようなのです。


 オレンジ色の太陽が、西の地平線にその姿を隠すと、やがて金色に光り輝く金星が西の空に現れました。

なおっちの目の前を、一機また一機と小型飛行機が着陸ライトを点灯しながら着陸してきます。