11機体炎上

 いつのまにかオレンジ色の太陽が西に傾き始めていました。

「さあ、なおっち、そろそろ飛行場にもどるよー」

 保奈美は大声で後ろのなおっちにいうと、機体を上昇させながら機首を北に向けました。

しばらく海の上を飛んで行くと、西日に照らされた陸地が見えてきました。

 前方に飛行場が見えてきたところで、保奈美が高度を下げ始めたその時です。突然、バンという音とともにエンジン付近から赤い炎がふき出しました。同時に黒い煙がたちこめ、前がまったく見えなくなりました。

「あー、なおっち、しっかりつかまって」

そう叫ぶと、保奈美はとっさに機体を急上昇させ、こんどは機首を下げて急降下を始めました。風圧で火が消えればと思ったのです。

しかし、エンジンの火は消えませんでした。それどころか真っ黒な煙で前がまったく見えなくなってしまいました。

「もうだめ、なおっち、脱出するよ」

保奈美はとっさにパラシュートを身につけると、左腕でなおっちを抱えて機体の外に飛び出しました。

宙に浮くと同時に、保奈美はパラシュートを開くひもを思い切り引っぱりました。

バンとパラシュートの開く音がしたのですが、一本の細いロープが絡まってパラシュートは半分しか開きません。

このまま落下してゆけば、保奈美となおっちは大地に激突してしまいます。

保奈美は必死になってロープを外そうとしましたが、なかなか外れません。大地はどんどん迫ってきます。