そう言うと、由紀子は亜紀に『また日曜日ね』と告げるとその場を去っている。それを見送った惟は亜紀に『今日は帰る?』と囁きかけている。先ほどまで由紀子に弄られていたという感のある亜紀にすれば、それは願ってもない言葉。コクコクと頷く彼女の額にそっとキスを落とした惟は、そのまま彼女を連れてラ・メールを後にしているのだった。
◇◆◇◆◇
その次の金曜日の夜。つまり、亜紀にとっては16歳の誕生日当日。その日、彼女はどこか居心地の悪い表情でレストランの席に腰かけていた。
そこは前に惟に連れてきてもらったことのあるホテル。ここって一條の系列ホテルだったな。そんなことを亜紀がぼんやりと考えている時、目の前に銀の蓋がされたトレーが置かれていた。
先ほどまで、惟と一緒にフルコースを堪能していた彼女にすれば、これの意味が分からない。たしか、デザートは終わったはず。そんなことを思う彼女に惟が甘い声で囁きかけてきた。
「亜紀、蓋をとって」
「う、うん……」
甘い響きではあるが、彼の声に逆らうということがどうにもできない。そう思う亜紀は、不思議そうな顔で目の前にあるトレーの蓋に手を伸ばしている。
「え!? これって?」
言われるままに蓋を取った亜紀の口から出る驚きの声。なにしろ、そこにあったのは、彼女が思ってもいないものだったからだ。そんな彼女に惟は「気に入ってくれた?」と囁きかける。それに対して、彼女はどう返事をすればいいのか分からないように口をパクパクさせるだけ。
◇◆◇◆◇
その次の金曜日の夜。つまり、亜紀にとっては16歳の誕生日当日。その日、彼女はどこか居心地の悪い表情でレストランの席に腰かけていた。
そこは前に惟に連れてきてもらったことのあるホテル。ここって一條の系列ホテルだったな。そんなことを亜紀がぼんやりと考えている時、目の前に銀の蓋がされたトレーが置かれていた。
先ほどまで、惟と一緒にフルコースを堪能していた彼女にすれば、これの意味が分からない。たしか、デザートは終わったはず。そんなことを思う彼女に惟が甘い声で囁きかけてきた。
「亜紀、蓋をとって」
「う、うん……」
甘い響きではあるが、彼の声に逆らうということがどうにもできない。そう思う亜紀は、不思議そうな顔で目の前にあるトレーの蓋に手を伸ばしている。
「え!? これって?」
言われるままに蓋を取った亜紀の口から出る驚きの声。なにしろ、そこにあったのは、彼女が思ってもいないものだったからだ。そんな彼女に惟は「気に入ってくれた?」と囁きかける。それに対して、彼女はどう返事をすればいいのか分からないように口をパクパクさせるだけ。


