「どこがベタ惚れよ! どこを見て、そうなるの?」
「全部。だって、校門であんたをみつけて近寄って来た時もそう。さっき、携帯に番号登録していた時も。ほんとにあんたのことが大事って顔してたもん。あんな顔されて、平気でいられるのも信じられない。ま、亜紀だし、仕方がないか」
「なんだか、意味の分からないことばかり言われてる。でも、それならどうして、契約だとか言うのよ。そんなこと言われてるのに、ベタ惚れなんて信じられるはずないでしょう」
半ば自棄になったように亜紀は叫んでいる。その彼女の姿を由紀子は呆れたように見つめるだけ。やがて、彼女は思っていることをポツリと呟いていた。
「なんだか、さっきの人が気の毒になるわ」
「どうしてよ」
「だって、ここまであんたに拒否されてるんだもんね。それでも、あちらはあんたのこと本気みたいだし」
「どこを見て、そういう結論になるのよ」
由紀子の言葉に苛立ちしか感じない亜紀はそう応えることしかできない。そんな彼女の頬をツンと突いた由紀子はもう一度「全部」というと大きくため息をついていた。
「亜紀、一つ訊いてもいい? あんた、さっきの人、惟さんだったっけ。その人が婚約者だって言われて、思いっきり拒否ったんじゃないの?」
「う……それはそうだけど……でも……」
「でも、じゃない。彼が契約だって言いだしたのは、間違いなくそれが原因だわ」
「全部。だって、校門であんたをみつけて近寄って来た時もそう。さっき、携帯に番号登録していた時も。ほんとにあんたのことが大事って顔してたもん。あんな顔されて、平気でいられるのも信じられない。ま、亜紀だし、仕方がないか」
「なんだか、意味の分からないことばかり言われてる。でも、それならどうして、契約だとか言うのよ。そんなこと言われてるのに、ベタ惚れなんて信じられるはずないでしょう」
半ば自棄になったように亜紀は叫んでいる。その彼女の姿を由紀子は呆れたように見つめるだけ。やがて、彼女は思っていることをポツリと呟いていた。
「なんだか、さっきの人が気の毒になるわ」
「どうしてよ」
「だって、ここまであんたに拒否されてるんだもんね。それでも、あちらはあんたのこと本気みたいだし」
「どこを見て、そういう結論になるのよ」
由紀子の言葉に苛立ちしか感じない亜紀はそう応えることしかできない。そんな彼女の頬をツンと突いた由紀子はもう一度「全部」というと大きくため息をついていた。
「亜紀、一つ訊いてもいい? あんた、さっきの人、惟さんだったっけ。その人が婚約者だって言われて、思いっきり拒否ったんじゃないの?」
「う……それはそうだけど……でも……」
「でも、じゃない。彼が契約だって言いだしたのは、間違いなくそれが原因だわ」


