たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

そのことが分かってはいても、こればかりは簡単に頷くことができない。しかし、アンジーは亜紀を説得しようと必死になっている。



「亜紀ちゃん、このドレスが君のマリエだってこと、分かってるんでしょう? だとしたら、君以外の人が着るってこと考えられないじゃない」


「それはそうだけど……」


「それに、さっきも言ったけど、君以外のモデルさんがこれ着るのって無理だよ。だって、身長が違うんだよ? それに手が空いているモデルさんもいないしね。そこのところ分かってよ」



そこまで言われると、これ以上の拒否ができないというのも人としての道理だろうか。それでも、なんとかして惟とのツーショットは逃れたい。そう思う亜紀はどこか逃げ道はないかと必死になって頭をひねっている。



「でもね、アンジー。やっぱり、これだけ大勢の人の前だと恥ずかしいの。アンジーの言いたいこと分かるけど、私の気持ちも分かってよ」


「亜紀ちゃんの言いたいことも分からないでもないよ。でもね。そう思うなら、やっぱり本番前に経験しておくことって必要なんじゃないかな?」


「そんなことないわよ! こんなこと、一度で十分だもの。何回も経験したら、その度に死んじゃうじゃない」


「亜紀ちゃん、大袈裟」



今にも死にそうというような表情で叫ぶ亜紀の姿に、アンジーは苦笑を浮かべることしかできない。だが、これ以上の言い争いも不毛だと感じたのだろう。諦めたような声がその口から漏れる。