だからだろう。ゆっくりとした足取りながらも、彼女は惟のそばへ近寄っていた。
「惟……大丈夫なの? 返事してよ……」
まだ不安が先に立つのだろう。呟く声は力のない微かなもの。だが、病室に響く点滴が落ちる規則的な機械音。穏やかな表情で目をつぶっている惟の姿。それらが徐々に亜紀の心理を落ちつかせているのだろう。その表情もだんだんと柔らかいものになっていく。
「ねえ、惟。私、あなたに言いたいことがあるのよ?」
ベッドサイドの椅子に腰かけ、点滴に繋がれていない方の腕に手を伸ばす亜紀。その口から漏れる声には、それまでにない甘さが含まれている。もっとも、言葉を口にした本人はそんなことを意識してはいない。彼女はただ、惟の顔をみつめているだけ。
「ねえ、目を覚ましてよ。私のこと、一人にしないって約束したじゃない」
拗ねたような口調で言葉が綴られる。だが、本気で拗ねていないからこそ続けられる言葉。
「あ、心臓の音が聞こえる。うん、よかった……それにあったかい……心配したんだから。心配で心配で、気が狂うんじゃないかって思ったんだから……」
ここに運ばれた理由をハッキリと覚えている亜紀の口からは不安気な声しか漏れてこない。それでも、こうやって彼の体温を心拍を確認できる。そのことで安心感を覚えたのだろう。今まで浮かべたことのない柔らかい表情がそこには宿っている。
「惟……好きよ。大好き。誰よりもあなたのことが好きです。愛しています」
そう告げる相手はまだ眠っている。だからこそ、口にできる言葉。それでも、亜紀の顔は真っ赤になってしまっている。そんな時、彼女の耳には思ってもいなかった声が飛び込んできた。
「惟……大丈夫なの? 返事してよ……」
まだ不安が先に立つのだろう。呟く声は力のない微かなもの。だが、病室に響く点滴が落ちる規則的な機械音。穏やかな表情で目をつぶっている惟の姿。それらが徐々に亜紀の心理を落ちつかせているのだろう。その表情もだんだんと柔らかいものになっていく。
「ねえ、惟。私、あなたに言いたいことがあるのよ?」
ベッドサイドの椅子に腰かけ、点滴に繋がれていない方の腕に手を伸ばす亜紀。その口から漏れる声には、それまでにない甘さが含まれている。もっとも、言葉を口にした本人はそんなことを意識してはいない。彼女はただ、惟の顔をみつめているだけ。
「ねえ、目を覚ましてよ。私のこと、一人にしないって約束したじゃない」
拗ねたような口調で言葉が綴られる。だが、本気で拗ねていないからこそ続けられる言葉。
「あ、心臓の音が聞こえる。うん、よかった……それにあったかい……心配したんだから。心配で心配で、気が狂うんじゃないかって思ったんだから……」
ここに運ばれた理由をハッキリと覚えている亜紀の口からは不安気な声しか漏れてこない。それでも、こうやって彼の体温を心拍を確認できる。そのことで安心感を覚えたのだろう。今まで浮かべたことのない柔らかい表情がそこには宿っている。
「惟……好きよ。大好き。誰よりもあなたのことが好きです。愛しています」
そう告げる相手はまだ眠っている。だからこそ、口にできる言葉。それでも、亜紀の顔は真っ赤になってしまっている。そんな時、彼女の耳には思ってもいなかった声が飛び込んできた。


