「どうして、そんなことを訊くの? それに、僕がその質問に応える義務があると思ってるの?」
「たしかにそうかもしれません。しかし、これはお答えいただきたいことだと思っております。先日、お嬢様に印をつけられたのはグラント様ではございませんでしたか?」
口調は問いかけだが、間違いなく雅弥は確信を持って言葉を口にしている。そんなことを感じさせる語調。その言葉にアンジーはため息をつくと、正面から雅弥の顔をみつめていた。
「本当は応えたくないんだよ。だって、これって個人のプライバシーの問題でしょう?」
「そうでしょうか? たしかに恋愛は個人の自由だといってしまえばそれまでだということは分かっております。グラント様のお国のフランスでは自由恋愛が叫ばれていることも存じております。しかし、ここは日本ですから。郷に入っては郷に従え。このような言葉があることをご存知ですか?」
「知ってるよ。惟からも教えてもらったから」
「でしたら、お答えいただけますか? 私にとってはこのことは何よりも重要なことだと思っておりますので」
顔は笑っているが目元がそうではない。雅弥のそんな様子に、逃げることはできないのだということを感じたのだろう。また、ため息を一つついたアンジーはゆっくりと口を開いている。
「君の質問の答えはoui(ウイ)。でも、これだけは言っておくけどね。さっき、はっきりと亜紀ちゃんに振られたの。それでも、君は気にする?」
「そうですね。十分に気にいたします。もっとも、私自身にも腹を立てておりますが」
「そうなの?」
「たしかにそうかもしれません。しかし、これはお答えいただきたいことだと思っております。先日、お嬢様に印をつけられたのはグラント様ではございませんでしたか?」
口調は問いかけだが、間違いなく雅弥は確信を持って言葉を口にしている。そんなことを感じさせる語調。その言葉にアンジーはため息をつくと、正面から雅弥の顔をみつめていた。
「本当は応えたくないんだよ。だって、これって個人のプライバシーの問題でしょう?」
「そうでしょうか? たしかに恋愛は個人の自由だといってしまえばそれまでだということは分かっております。グラント様のお国のフランスでは自由恋愛が叫ばれていることも存じております。しかし、ここは日本ですから。郷に入っては郷に従え。このような言葉があることをご存知ですか?」
「知ってるよ。惟からも教えてもらったから」
「でしたら、お答えいただけますか? 私にとってはこのことは何よりも重要なことだと思っておりますので」
顔は笑っているが目元がそうではない。雅弥のそんな様子に、逃げることはできないのだということを感じたのだろう。また、ため息を一つついたアンジーはゆっくりと口を開いている。
「君の質問の答えはoui(ウイ)。でも、これだけは言っておくけどね。さっき、はっきりと亜紀ちゃんに振られたの。それでも、君は気にする?」
「そうですね。十分に気にいたします。もっとも、私自身にも腹を立てておりますが」
「そうなの?」


