たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

そう言うとアンジーは病室から出て行こうとする。その彼の背中に「アンジー、ごめんなさい」という亜紀の声が投げられる。だが、彼はそれに応えることなく、その場から立ち去っていく。

そんなアンジーの前に現れる影。それが誰なのか分かったアンジーはあえて何も言おうとはしない。だが、相手がそんな彼をそのままにしていない。静かな穏やかな調子で声がかけられていた。



「グラント様、お嬢様とのお話はお済みになられたようですね。今から山県様のところでしょうか? もし、そうではないとおっしゃられるのでしたら、出口までお見送りさせていただきます」



その声にアンジーが返事をすることはない。だが、そのことも承知の上、というような調子で相手は言葉をかけ続ける。



「何かお気を悪くされるようなことを申し上げましたでしょうか? お嬢様のお見舞いにおいでになられた方をそのままお返しするというのは、礼儀に反することだと思っておりますので」



ここまで言われて返事をしないのは、逆に自分の常識を疑われる。そう思ったアンジーは思わずため息をつくと相手の声に応えていた。



「竹原さんでしたっけ? 亜紀ちゃんとの話は終わりましたよ。それから今日は惟に会うつもりはないので帰ります。でも、わざわざ見送ってもらう必要ないと思いますけど? そうじゃありませんか? ここは病院なんだ。君がいる一條家のお屋敷じゃないんだし」


「そうかもしれません。しかし、確認したいことがございまして」



雅弥の言葉にアンジーは嫌な顔を見せている。もっとも、そのことを雅弥が気にする気配もない。彼は淡々とした調子で言葉を続けていく。



「僭越ではありますが、お嬢様に好意をお持ちなのですよね。違っておりますでしょうか?」