たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

「亜紀……」



今のアンジーにとって、亜紀が惟に向ける思いを耳にするのは辛いことのはず。だが、ちゃんと聞かなければいけない。そう思ってはいても、思わず亜紀の名前が口から漏れる。その言葉の響きに宿るものを感じた亜紀は思わず手を口に当てると、バツの悪そうな表情を浮かべていた。



「ゴメンなさい。こんなこと聞きたくないですよね」


「ううん、いいよ。亜紀の口からちゃんと聞いた方が、諦めがつく。だから、気にしないで」



そうは言っても、アンジーの顔色はどこか悪い。そのことに気がついた亜紀は、これ以上のことは言えないというように口を閉ざす。そんな彼女の額にアンジーはそっとキスを落としていた。



「これくらい、いいだろう? これで、ちゃんと亜紀のこと諦めるから。惟と幸せになって」


「う、うん……」


「今ね、君のためのマリエを作ってるの。もうちょっとしたら完成するから、それを着た君を一番に見せてくれる?」



彼の言葉に亜紀は反射的に顔を上に上げている。そこに浮かんでいるのはどこか困惑したような表情。そんな彼女またキスを落としながら、アンジーは囁きかけてくる。



「本当は惟よりも先に見るってダメなんだろうけどね。でも、これくらいは許してもらいたいんだよ。絶対、亜紀に似合うものに仕上げるから。だから、ご褒美。僕に君のマリエ姿を一番先に見る権利をちょうだい」



亜紀の耳に囁かれるその言葉は甘いだけではなく、どこか苦いものも含んでいる。そのことに気がついたのだろう。亜紀はアンジーの顔を正面から見ると、コクリと微かに頷いている。