たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

今の亜紀は感情を抑えることができないのだろう。途切れがちになる声には嗚咽が混じり、肩が小刻みに震えている。それなのに、手はナイフを離そうとせず、己の首筋に当てられたまま。

このままでは亜紀が怪我をする。そう思ったアンジーがなんとかして離させようとするが、彼女は首を振り続けるだけ。



「亜紀、危ないからナイフを離して。君が怪我をするだろう」


「関係ないもの。惟がいないんなら、どうなったってかまわないの」


「そんなこと言わない。早く、ナイフを元に戻して」


「イヤ! グラントさんこそ離して。離してちょうだい!」



亜紀は止めようとするアンジーの手を振り払うように身をよじる。そのまま一気に首筋に食い込んでいく刃。微かな痛みとともに肌が傷つけられ赤い糸がツッと流れる。その光景にアンジーは亜紀を止めなければと必死になっていく。

ベッドの上でもつれあうように絡まり合う二人の視線。やがて床の上にカシャーンという音が響いたかと思うと、ナイフが転がっていく。それにも気がつかないように、アンジーは亜紀の体をしっかりと抱きしめていた。



「亜紀、早まっちゃいけない。惟が君をおいて逝くなんてことあるはずないだろう」


「でも……でも……」


「僕の言い方が悪かったよね。でも、僕の気持ちも分かってよ。亜紀のこと好きだって言ったんだよ。それなのに、君は僕のことを見てくれないじゃない。そのことに嫉妬した」


「グラントさん……」