たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

なんとかして惟の様子を知りたい。そんな思いだけが強くなっている亜紀の表情は、だんだんと必死なものになっていく。そんな彼女の気迫に、アンジーは飲まれてしまったのだろう。彼の口から「惟、ね……」という力のない呟きがもれてくる。

その声は今の不安にさいなまれる亜紀にとっては、最悪なことしか連想させない。はっきりとしたことを聞かされた訳ではない。それにも関わらず、彼女の顔はすっかり青ざめ、ガチガチと歯がぶつかり合う。



「亜紀、どうしたの? 何かあったの?」



彼女の様子が急に変わったことに驚いたのだろう。アンジーが不安気な声をかける。そんな彼の声も今の亜紀の耳には入っていない。彼女の視線はベッドのそばに置いてあるトレーに向けられている。

そこにあるのは真っ赤なリンゴとぺディナイフ。そのナイフに手を伸ばした亜紀は、躊躇うことなく自分の首筋にその刃を向けていた。



「亜紀、何をするんだ! 馬鹿なことはやめるんだ!」



彼女のやろうとしたことに気がついたアンジーが大声を上げる。だが、亜紀の手が止る気配はない。ギュッと目をつぶった彼女はナイフを握る手に力を入れると、自分自身を傷つけようと必死になっていく。



「亜紀、早まったことするんじゃない!」


「そんなことない。惟がいないなんて、私には我慢できないの。だって、約束したもの。絶対に私を一人にしないって。それなのに……それなのに……」