亜紀が眠るベッドのかたわらに静かに腰掛けたアンジーはそう囁いている。だが、彼の望みが叶う気配はまるでない。
亜紀にかけられている軽い布団は規則正しく上下し、彼女がぐっすりと眠っていることだけを知らせている。その腕の片方が布団から出ている。そう思ったアンジーが布団をかけ直そうとした時、彼の視線は細い点滴の管に縫いとめられていた。
怪我はなかったときいている。だが、惟が刺されたということが精神的に大きな痛手になったのは間違いない。伝え聞いた話では、現場で半狂乱になっていたという。
それだけのショックを受けた彼女の精神を安定させるためにも点滴が処方されているのだろう。そう思ったアンジーの顔色が一気に悪くなっていく。
その時、目覚めないだろうと思っていた亜紀が微かに身じろぎをすると、ゆっくりと瞼が開いていく。その姿を見たアンジーはどう言葉をかければいいのか分からなくなっていた。
それでも、黙っていることはできない。そう思ったアンジーは亜紀の髪に手を伸ばしながらゆっくりと声をかけていく。
「亜紀、気がついたんだね。体は大丈夫?」
「グラントさん……どうして、ここに?」
まだ意識がはっきりと戻ってきていないのだろう。どこかボンヤリとした表情で亜紀はそう呟いている。その声が呼ぶのはアンジーという彼の名ではない。
これが亜紀の出した答えなのだろうか。そう思ってはいても、アンジーはそれを拒否するかのように頭を大きく振っている。その姿が不思議だと思った亜紀の口から出るのは疑問の声だけ。
亜紀にかけられている軽い布団は規則正しく上下し、彼女がぐっすりと眠っていることだけを知らせている。その腕の片方が布団から出ている。そう思ったアンジーが布団をかけ直そうとした時、彼の視線は細い点滴の管に縫いとめられていた。
怪我はなかったときいている。だが、惟が刺されたということが精神的に大きな痛手になったのは間違いない。伝え聞いた話では、現場で半狂乱になっていたという。
それだけのショックを受けた彼女の精神を安定させるためにも点滴が処方されているのだろう。そう思ったアンジーの顔色が一気に悪くなっていく。
その時、目覚めないだろうと思っていた亜紀が微かに身じろぎをすると、ゆっくりと瞼が開いていく。その姿を見たアンジーはどう言葉をかければいいのか分からなくなっていた。
それでも、黙っていることはできない。そう思ったアンジーは亜紀の髪に手を伸ばしながらゆっくりと声をかけていく。
「亜紀、気がついたんだね。体は大丈夫?」
「グラントさん……どうして、ここに?」
まだ意識がはっきりと戻ってきていないのだろう。どこかボンヤリとした表情で亜紀はそう呟いている。その声が呼ぶのはアンジーという彼の名ではない。
これが亜紀の出した答えなのだろうか。そう思ってはいても、アンジーはそれを拒否するかのように頭を大きく振っている。その姿が不思議だと思った亜紀の口から出るのは疑問の声だけ。


