「何に対して謝るの?」


「千影さん、いや、うちの南原がやったことに対しての謝罪。本当に申し訳なかったと思っています」



その声に拓実の眉がピクリと跳ね上がる。今の彼の顔には、それだけではないだろうという非難の色が浮かんでいる。



「それだけ? 他には言うことないの? 君ってアンジー・グラントでしょう? 惟さんの友人でファエロアのメインデザイナー。でも、それだけ惟さんに近い人だったら、亜紀ちゃんにちょっかいかけないでよ。ま、彼女が魅力的だってことは否定しないけどね」



拓実の言葉にアンジーは返事をすることができなくなっている。そんな彼に、拓実は容赦なく言葉をぶつけていく。



「そうでしょう? 亜紀ちゃんと惟さんがギクシャクしちゃった原因の一つは君でしょう? 僕、そう思ってるんだけど。そんな君と亜紀ちゃんを会わせると思ってるの? そのあたりは常識っていう言葉が必要だと思うんだけど?」


「たしかにそうですね。でも、惟もこのことは知っているし、認めてくれている。だから……」


「だから、何? 惟さんはあの通りの性格だから気にしないって言ったんだろうけどね。でも、僕は気にするわけ。ということで、帰ってくれない? 亜紀ちゃんには会わせないよ」



そう言い切ると、拓実はアンジーの目の前で扉を閉めようとする。その時、「拓実様、院長がお目にかかりたいとおっしゃっておられます」という声が響く。それを耳にしたとたん、一気に嫌そうな顔をみせる拓実。