となると拓実に訊ねるしかない。もっとも、彼がちゃんと教えてくれるのだろうか。そんな一抹の不安を感じながらも、亜紀は問いかけの言葉を口にすることしかできなかった。



「ねえ、お兄ちゃん」


「ん、亜紀ちゃん、どうかした?」


「ここって、病院よね? 私、どうしてここにいるの? 別に怪我とかしてないと思うんだけど」



不安気な調子で問いかけられる声。それにフッと微笑を浮かべた拓実は彼女の頭を軽くポンポンと叩いている。その仕草に子供扱いをされたと感じたのだろう。思わず頬を膨らませる亜紀に対して、拓実は心配した色を隠すことなく話しかけていた。



「うん。たしかに亜紀ちゃんは怪我をしてないよ。でも、体は大丈夫でも心がそうじゃなかったから」


「訳が分からない」


「そう? でも、雅弥から亜紀ちゃんが倒れたって聞いた時は、心臓が止るかと思ったよ。おまけになかなか目を覚まさないんだよ。だから、亜紀ちゃんが気がついて本当によかった」



そう言いながら拓実は亜紀の髪の気をグシャリとかき乱す。そのことに抗議の言葉を発したい亜紀だが、心配をかけたという思いもあるのだろう。しょぼんと下を向いてしまっている。そんな彼女の様子に、拓実はすっかり慌てたようになってしまっていた。



「あ、亜紀ちゃん。だからって、君のこと責めてるわけじゃないからね。だから、そんな顔しないでよ。僕は亜紀ちゃんが笑ってる顔が一番好きなんだから」


「お兄ちゃん……」