たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

どうして、ここに雅弥がいるのだろう。この頃、放課後は彼の迎えが当然になっていたにも関わらず、そんなことを亜紀は思っている。それだけ、今の状況に頭がついていっていないのだろう。

そんな中、彼女はもたれてくる惟の息がだんだんと荒くなってきていることに気がついている。そして、彼女の着ている制服の白いスカートが真っ赤になっている。

これの意味することが分かった時、今度は彼女が周囲の誰よりも大きな悲鳴を上げていた。



「惟! しっかりして! しっかりしてよ! 誰がこんなことしたのよ!」



誰がと亜紀は口にするが、これをしでかしたのが誰なのかは分かっている。先ほど、自分に刃物を向けてきた相手。その相手がやったことに間違いないのだ。

そう思う亜紀は、周囲にその人物がいるのではないかと視線を巡らす。すると、彼女が座り込んでいるちょっと先に真っ青になってガタガタと震えている女性がいる。

あれが間違いなく先ほどの相手だ。そう思い、相手を睨みつける亜紀。そんな彼女に毒を含んだ声が投げつけられる。



「どうしてよ! どうして、あなたなんかをかばうのよ。私、惟様を傷つけるつもりなんてなかったのに! あなたみたいな子供がそばにいる方がおかしいのよ。私に返してよ! あなたよりも私の方が惟様には相応しいの。あなたなんて守られてるだけの子供じゃない。今だって、そうじゃない。私に彼を返してよ!」



亜紀を刺そうと思っていたのに、彼女をかばった惟を刺してしまった。そのことで千影の精神状態はおかしくなっているのだろう。錯乱状態で亜紀に飛びかかってこようとする。そんな彼女を情け容赦なく取り押さえる雅弥。そのまま、彼は千影に対して怒鳴り声を上げている。