「亜紀ちゃん、分かったよ。落ちついて。ここから出るからね。歩ける? 僕の車のところまで行けそう?」
アンジーのその問いかけに、亜紀は必死になって首を振っている。その姿からは、ここにいたくないのだ、ということだけがひしひしと伝わってくる。
それはいつもの亜紀とはまるで違う。そんな彼女の姿に、ラ・メールのマスターは驚くだけ。それでも、彼女が興奮している理由というのにも気がついたのだろう。アンジーを促すと、裏口に続く扉を示している。
それに対して軽く頷いたアンジーが亜紀を導くようにその場を離れていく。そして、バタンと扉が閉まったのと惟が入ってくるのとは同時。だが、そのことを亜紀は気がついていない。
「グラントさん……私、何も分からない……」
先ほどの光景がショックだったのだろう。亜紀は泣きじゃくりながらそう告げるだけ。そんな彼女を支えるようにして歩くアンジーは、彼女を車へと乗せている。そのまま、ある場所へと走った彼は、亜紀を落ちつかせるように背中をポンポンと叩いていた。
「亜紀ちゃん、落ちついた?」
「グラントさん……」
まだ精神的には落ちついていない。だが、場所を変えたことで少しは気持ちが変わったのだろう。先ほどまでの興奮状態が嘘のように、亜紀はぼんやりとした声を出している。
そんな彼女の手にそっと握らされるカップ。そこから感じる温かさに、彼女の心は少しずつ平静さを取り戻そうとしていた。
アンジーのその問いかけに、亜紀は必死になって首を振っている。その姿からは、ここにいたくないのだ、ということだけがひしひしと伝わってくる。
それはいつもの亜紀とはまるで違う。そんな彼女の姿に、ラ・メールのマスターは驚くだけ。それでも、彼女が興奮している理由というのにも気がついたのだろう。アンジーを促すと、裏口に続く扉を示している。
それに対して軽く頷いたアンジーが亜紀を導くようにその場を離れていく。そして、バタンと扉が閉まったのと惟が入ってくるのとは同時。だが、そのことを亜紀は気がついていない。
「グラントさん……私、何も分からない……」
先ほどの光景がショックだったのだろう。亜紀は泣きじゃくりながらそう告げるだけ。そんな彼女を支えるようにして歩くアンジーは、彼女を車へと乗せている。そのまま、ある場所へと走った彼は、亜紀を落ちつかせるように背中をポンポンと叩いていた。
「亜紀ちゃん、落ちついた?」
「グラントさん……」
まだ精神的には落ちついていない。だが、場所を変えたことで少しは気持ちが変わったのだろう。先ほどまでの興奮状態が嘘のように、亜紀はぼんやりとした声を出している。
そんな彼女の手にそっと握らされるカップ。そこから感じる温かさに、彼女の心は少しずつ平静さを取り戻そうとしていた。


