たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

「わかってる。南原、話は手短に。時間も勿体ないし、歩きながらでいいかい?」



惟の言葉に、千影は満面の笑みを浮かべて「はい」と応えている。そのまま、アンジーの隣をすぎる時、『ありがとう』と声にならない声を出す。そんな彼女と惟の後姿を見送ったアンジーはグッと拳を握ると、亜紀を迎えにその場を離れようとしているのだった。



◇◆◇◆◇



「亜紀ちゃん、待たせたよね」



いつもと同じように惟を待つ白綾の校門。そこで亜紀の耳に飛び込んできたのは、いつものテノールではない。

いや、同じような柔らかい声だが、気持ち明るい雰囲気。そして、何よりの違和感は彼女を『亜紀ちゃん』と呼ぶこと。

惟が彼女のことをそのように呼ぶことはない。一体、誰なのだろうといぶかしげな表情を見せる亜紀の前にニコニコと笑うハニーブロンドの髪の主が立っていた。



「グラントさんじゃないですか。どうして? 惟は一緒じゃないの?」



今までアンジーがこうやって来たことはない。そのせいだろう。亜紀の頭にはハテナマークしか浮かんでこない。

その彼女の顔が微かに落胆の色を浮かべている。そのことに気がついたアンジーはふっと眉を下げてだけ。

だが、これは覚悟していたことのはず。そう思って気を取り直したのだろう。彼はいつものように明るい声で亜紀に話しかけていた。