たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

千影のその声に、惟は傍目でみても分かるくらい嫌な表情を浮かべている。その顔には、この時間は用があるといっているだろう、と告げているかのよう。しかし、千影が諦めるはずもない。彼女はアンジーに意味ありげな視線を送ると、惟に書類を突き付けている。



「これらの書類を片付けないといけないことはお分かりだと思います。できるだけ早く処理をしたいと思っているのですが、いけませんでしょうか」


「南原、何も全部僕がタッチしないといけないことじゃないだろう。ある程度は君の裁量に任せているんだ。そうじゃなかったかい?」


「それはそうですが……それでも、最終的にはご相談した方がいいと思いまして」



いつもならばあっさりと引き下がる千影が、今日に限ってしつこく言葉を重ねる。そのことにため息をつく惟。それをみていたアンジーが口を挟んでいる。



「ねえ、惟。僕がお姫様を迎えに行っちゃダメ? もちろん、送るなんてこと言わないよ。それは惟の役目だから。でも、お姫様は一人なんだろう? 危ないし、どこか安心できる場所まで連れて行ってあげる。それならいいんじゃない?」


「アンジーがそう言ってくれるのなら、頼もうかな。ラ・メールは知ってるよね?」


「前に惟に連れて行ってもらった紅茶の美味しい店だよね。うん、知ってるよ。あそこのマスターとも仲良くなったしね。そこでいいの?」



ちょっと首を傾げながら問いかけるアンジーに、惟は頷くことしかできない。その姿に、「わかったよ」と呟いた彼は、車のキーを手に取っている。



「できるだけ早くおいで。お姫様も惟がいないと寂しいって思うだろうしね」