その時は自分の気持ちを抑えることはできないだろう。そんなことをアンジーは考えている。
断ってほしい。いや、断って欲しくない。そんな相反する思いが渦巻く中、彼は運命の言葉を惟に向かって投げかける。
「惟、そろそろお姫様を迎えに行くんだろう? 今日、僕も一緒に行っていい? ちょっとこの頃スランプで。お姫様の顔見たら、何かイメージが湧いてきそうな気がするんだよね」
さり気ない調子で問いかけられた言葉。だが、アンジーは惟の答えを知っていると思っている。間違いなく彼は断るだろう。
あの時間は溺愛している亜紀との逢瀬の時なのだ。それを他人に邪魔されたくない。
惟のその思いが強いことは、誰よりもアンジーが知っている。だというのに、相手はそんな彼の思いを裏切るような言葉を口にしていた。
「そうなんだ。そういえば、このところデザインも何も手についていないようだったね。気分転換になるかもしれないし、一緒に行こうか。亜紀もアンジーのことは好きだって言ってたし」
「そ、そう……嬉しいな」
亜紀が自分のことを『好き』だと言っていた。この言葉はアンジーにとって何よりも嬉しいこと。しかし、それが恋愛感情を含んだ物なのか、友人としても物であるのか。
もっとも、訊ねるまでもなく後者であることは間違いない。それでも、ひょっとしたら、という期待が彼の中に生まれている。そして、そんなアンジーの様子に気がついたのだろう。千影が書類の束を抱えて惟のそばに近寄っていた。
「惟様。ちょっとご相談したいことがあるのですが……」
断ってほしい。いや、断って欲しくない。そんな相反する思いが渦巻く中、彼は運命の言葉を惟に向かって投げかける。
「惟、そろそろお姫様を迎えに行くんだろう? 今日、僕も一緒に行っていい? ちょっとこの頃スランプで。お姫様の顔見たら、何かイメージが湧いてきそうな気がするんだよね」
さり気ない調子で問いかけられた言葉。だが、アンジーは惟の答えを知っていると思っている。間違いなく彼は断るだろう。
あの時間は溺愛している亜紀との逢瀬の時なのだ。それを他人に邪魔されたくない。
惟のその思いが強いことは、誰よりもアンジーが知っている。だというのに、相手はそんな彼の思いを裏切るような言葉を口にしていた。
「そうなんだ。そういえば、このところデザインも何も手についていないようだったね。気分転換になるかもしれないし、一緒に行こうか。亜紀もアンジーのことは好きだって言ってたし」
「そ、そう……嬉しいな」
亜紀が自分のことを『好き』だと言っていた。この言葉はアンジーにとって何よりも嬉しいこと。しかし、それが恋愛感情を含んだ物なのか、友人としても物であるのか。
もっとも、訊ねるまでもなく後者であることは間違いない。それでも、ひょっとしたら、という期待が彼の中に生まれている。そして、そんなアンジーの様子に気がついたのだろう。千影が書類の束を抱えて惟のそばに近寄っていた。
「惟様。ちょっとご相談したいことがあるのですが……」


