そんな中、彼の心の中で囁かれ続ける声がある。だが、それに耳を傾けることはあってはならない。そんな頑なな思いが彼の中にはある。しかし、その声はあまりにも魅惑的でアンジーの理性を段々と麻痺させていく。
「一度だけ……一度だけなら、許してもらえる? だよね。きっと、許してもらえる、よね」
彼の中で大きくなっていく声を止めることはできない。そして、それが甘ければ甘いほど、毒を孕んでいることも間違いない。だというのに、今のアンジーはその言葉を拒否できない。
いや、拒否しようと思っていたが、ついに飲み込まれた。そういう方が正しいのだろう。そして、そのまま壁の時計を見上げた彼は、今の時刻を確認している。
「もう、こんな時間なんだ。今から、惟は彼女を迎えに行くんだろうな……もし、それに僕が一緒に行くと言ったら? そうすれば、惟はどうすんだろう」
これは一つの賭けだ。そんなことをアンジーは思っている。
惟が亜紀を迎えに行く時は邪魔をしない。
それは特に言葉にされたわけではないが、二人の間で交わされた約束でもある。そこに自分が割り込む。今までならば考えもしなかったこと。だが、今のアンジーはそうしたいという思いが大きくなっている。
もし、その場に自分が割り込むことを許されたら。あり得ないことだが、ふとそんな願望が彼の中に生まれている。
惟が了承しなければいい。そうすれば、自分は亜紀のことを諦めることができる。
だが、彼が承諾した時は——
「一度だけ……一度だけなら、許してもらえる? だよね。きっと、許してもらえる、よね」
彼の中で大きくなっていく声を止めることはできない。そして、それが甘ければ甘いほど、毒を孕んでいることも間違いない。だというのに、今のアンジーはその言葉を拒否できない。
いや、拒否しようと思っていたが、ついに飲み込まれた。そういう方が正しいのだろう。そして、そのまま壁の時計を見上げた彼は、今の時刻を確認している。
「もう、こんな時間なんだ。今から、惟は彼女を迎えに行くんだろうな……もし、それに僕が一緒に行くと言ったら? そうすれば、惟はどうすんだろう」
これは一つの賭けだ。そんなことをアンジーは思っている。
惟が亜紀を迎えに行く時は邪魔をしない。
それは特に言葉にされたわけではないが、二人の間で交わされた約束でもある。そこに自分が割り込む。今までならば考えもしなかったこと。だが、今のアンジーはそうしたいという思いが大きくなっている。
もし、その場に自分が割り込むことを許されたら。あり得ないことだが、ふとそんな願望が彼の中に生まれている。
惟が了承しなければいい。そうすれば、自分は亜紀のことを諦めることができる。
だが、彼が承諾した時は——


