左手の指輪を守るように右手で隠した亜紀がそう呟いている。だが、彼女が『惟』と呼んだことが千影の逆鱗に触れたことは間違いない。一気に彼女の表情が険しくなったかと思うと、グイッと亜紀の左手を狙って手を伸ばしてくる。
「聞き分けのない子って嫌われるのよ。これはあなたみたいな子供がつけていいものじゃないの。それくらい価値があるものだってこと分からないの?」
「これがどれくらいの価値があるものかってこと、私にだって分かっています。でも、これは外しません。約束したもの。学校以外ではちゃんとつけるって約束したもの!」
亜紀の叫び声が静かなラ・メールの店内に響いている。その声に、その場にいた人々の視線が一気にカウンターに集まってくる。だが、そんなことも千影には関係ない。彼女はギリッと唇を噛みしめると、亜紀のはめている指輪を奪おうとする。
「あなたなんかに相応しくないの。どうやって、惟様をたぶらかしたのよ。あの人が、あなたみたいな子供を相手にするはずないでしょう。そんなことも分からないの?」
今の千影は半ばヒステリーの発作を起こしているのだろう。自分の思っていることだけを必死になってぶつけている。そんな彼女に由紀子がのんびりとした口調で言葉をぶつけていた。
「おばさん、勘違いしてる。亜紀の首筋みてごらんなさいな。あんなに沢山、キスマークついてるのよ。おばさんなら大人だし、あのマークの意味、分かるわよね?」
その声に千影はキッと亜紀の顔を睨みつけている。その視線が彼女の首筋に向けられているのは間違いない。そして、そこにある痕が一つや二つではない。そのことに気がついた彼女は、怒り狂った表情で、亜紀の洋服に手をかけようとしていた。その手がガシッと止められている。
「聞き分けのない子って嫌われるのよ。これはあなたみたいな子供がつけていいものじゃないの。それくらい価値があるものだってこと分からないの?」
「これがどれくらいの価値があるものかってこと、私にだって分かっています。でも、これは外しません。約束したもの。学校以外ではちゃんとつけるって約束したもの!」
亜紀の叫び声が静かなラ・メールの店内に響いている。その声に、その場にいた人々の視線が一気にカウンターに集まってくる。だが、そんなことも千影には関係ない。彼女はギリッと唇を噛みしめると、亜紀のはめている指輪を奪おうとする。
「あなたなんかに相応しくないの。どうやって、惟様をたぶらかしたのよ。あの人が、あなたみたいな子供を相手にするはずないでしょう。そんなことも分からないの?」
今の千影は半ばヒステリーの発作を起こしているのだろう。自分の思っていることだけを必死になってぶつけている。そんな彼女に由紀子がのんびりとした口調で言葉をぶつけていた。
「おばさん、勘違いしてる。亜紀の首筋みてごらんなさいな。あんなに沢山、キスマークついてるのよ。おばさんなら大人だし、あのマークの意味、分かるわよね?」
その声に千影はキッと亜紀の顔を睨みつけている。その視線が彼女の首筋に向けられているのは間違いない。そして、そこにある痕が一つや二つではない。そのことに気がついた彼女は、怒り狂った表情で、亜紀の洋服に手をかけようとしていた。その手がガシッと止められている。


