たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~

ようやく、想いが叶う。今まで惟に対して抱いていた愛情を隠す必要がなくなる。

そんなことを思っていた彼女は、期待に満ちてその日を待っていた。なにしろ、先日までトルソーにかけてあったドレスがなくなっている。それは、依頼主の元に届けられたということを示している。では、いつ自分の元に届くのか。

そんなことを楽しみにしていた千影の目に飛び込んできた週刊誌。その誌面と表紙を飾っているカップルの姿。少々、年の差を感じさせる二人だが、間違いなく美男美女のカップル。

だが、その男性の顔と女性が纏っているドレス。それらに気がついた千影は、息をすることも忘れるくらいの衝撃に襲われたのだ。


どうして、惟が自分以外の女性と並んでいる?


どうして、その相手が彼女のものになるはずのドレスを纏っている?


写真を目にした時の千影の思いはそれしかない。そして、それ以上の衝撃が彼女を待っていた。

それは、写真に写っている女性の左手薬指。そこに輝いているのは、ダイヤの指輪。

それが婚約指輪であることは間違いない。ましてや記事の中では『熱愛発覚』・『婚約者は一條家のご令嬢』という言葉が躍っている。

この事実は受け入れることができない。だが、ここまで大々的にニュースになっていることが偽りであるとは思えない。なにしろ、相手は『一條』なのだから。

千影にしても一條コーポレーションという企業の名は耳にしたことがある。というより、ファエロアの入っているファッションビルのオーナー企業でもある。そこの令嬢とファエロアの代表である惟との婚約は年の差という障害はあったとしても、あり得ない話ではない。