「兄弟!?」
あれから10分後。
ようやく、名刈さんは渋々と奥の部屋から出てきた。そこで皐月くんから聞かされたのは、二人が兄弟だという事実。
言われてみれば……どことなく似てるような…。
けれどもそれは『言われてみれば』の程度で…。
「あまり、似てないんですね。わかりませんでした」
沢田くんが私の気持ちを代弁してくれた。
「よく言われる。皐月は父さん似で、俺は母さん似だからね……」
さっきまでは威勢良く楽しそうにしていた名刈さんが今では物静かになっている。
それがなんだか可笑しかった。
可愛らしくも思う。
「あー、何笑ってんの。茉那ちゃん」
「まっ……!?」
いきなりの名前呼びにびっくりして見ると、相手は皐月くんだ。
え、私一応あなたの上司なんだけど。
「…………」
これは…なんて答えればいいのかしら。
ここで返事したら、きっとずっと『茉那ちゃん』呼びよね…。
「茉那ちゃん?」
「………………」
「茉那ちゃーん?」
あーもう。
いいわよっ!茉那ちゃんでっ!!
「何っ!?」
「……何で怒り気味?」
「あ、ごめんなさい」
つい勢いで……あはは。
「?」
皐月くんは不思議そうに私の顔を眺めてからどこかに行ってしまった。
向こうで楽しそうに話すみんなを見ながら思う。
あぁ…これからこのメンバーで仕事を進めて行かなければいけないのね…。
決して気分は良いものではない。

