「名刈さ…あ」


奥の部屋をのぞくと、いた。


「何で急にいなくなるんですか。事務員の皐月くんが来ましたよ」


「い、いや。俺はいいよ…。俺、この中で一番偉いし?」


「意味がわかりません」

突っ込みを入れたが、一向に動く気配がない。


と、そこへ後ろから声が聞こえた。



「今日からここで働く事務員の皐月でーす。どうよろしく」


「よろしく…」


さっきまでとは打って変わった弱々しい声が、その後ろ姿から聞こえてくる。


「対峙して挨拶したらどうです?何で後ろ向いたままなんですか…」


「そーですよ~。名刈さん」


心なしか、皐月くんは『名刈さん』を強調したように聞こえた。


「皐月くん…?」


「それとも~俺と顔を合わせたくない理由があるんですかぁ?」


「………?」


二人って知り合いなの…?


名刈さんと皐月くんの雰囲気を見てなぜかそう思う。



「あの…」


お二人は知り合いなのですか?


何となく言えない一言。




「名刈さん?な~かりさ~ん!名刈さ~ん?名刈さ~ん!名」

「うるさい、皐月!」



私が言おうか悩んでいると、名刈さんの声が部屋に響いた。


「皐月……?」


やっぱり…。


名刈が顔を真っ青にしているのに対し、皐月くんはなんだか楽しそうだ。