………なんか…名刈さんのペースに巻き込まれているわね、私。
まあ、いいか。
「そういえば新入社員の子、まだ来ませんね」
「ああ、そうだね~。もうそろそろ来る頃だとは思うんだけどね」
「……………。あの」
「ん?」
「椅子で回るの止めてもらえませんか。落ち着かないです」
また名刈さんはケラケラ笑う。それでも椅子を止める気配は更々なく。
「俺、ここで一番偉いし~。ここで何しても俺を咎められる人いないし~」
なんて言っている。
だから私は、今度は聞こえるように大きく息を吐いた。
まったく。
子どもじゃないんだから。
そんなとき。
C室のドアが開く音がした。
「すいませ~ん。本日からここで働かせていただく者ですが」
新入社員だわ。
ふいっと名刈さんを向くと、それはそれは素晴らしい笑顔で。
『行ってらっしゃい』
そう、その笑顔は言っていた。

