図書館彼氏【短編】

「で、どうしたの?」


「あのですね、俺来週の月曜日引っ越すんです」


「え?どうしていきなりそんなことに?」


「父の転勤が決まったんです。関西に引っ越すと言っていました」


「そう。転勤なら仕方ないわね。梨沙ちゃんには言ったの?」


「言ってません。言わないつもりです。遠距離で続く自信がないし、別れるのも嫌なので自然消滅ということにします」


なんか自分で言ってて思う。

俺って最低だ。

おまけに自己中。


「颯斗くんって変わったわね。小さい頃は大人っぽかったのに、今じゃ、不器用で自己中。そ
れじゃあ梨沙ちゃんが可哀想......でも、そうなるってわかった上での話なんでしょ?もう、どうしようもなかったのよね?」


なんで宮田さんはこんなにも優しいんだろう。

そして、ちゃんと理解してくれてる。

こんな宮田さんがいたからこそ、ここまでやってこれたんだよな。


「宮田さんの言っている通りです。これは絶対梨沙には言わないでください。それと、月曜日は梨沙の誕生日なんです。一緒にいてあげてください。俺の代わりに...」


「わかったわ。梨沙ちゃんが悲しまないような誕生日にするわね」


「ありがとうございます。宮田さん、今までありがとうございました。俺、またこの街に戻って、梨沙を取り戻します」


「待ってるわ。梨沙ちゃんと颯斗くんは離れるべき人たちではないと思うの。運命の2人だと思う。だからこそ、取り戻しなさい」


「はい」


やっぱり宮田さんに言ってよかった。

なんかちょっとだけすっきりした。

運命の2人か。

そんなこと言われるんだったら、絶対に梨沙を取り戻してやる。