図書館彼氏【短編】

【颯斗side】

「ここでいいか?」


「うん。じゃあね!」


「おう。じゃあな」


付き合ってから数週間たった今日。

本当に幸せだなって改めて思った。

両想いになって、付き合えて。

付き合うのなんて当たり前のことじゃない。

だからこそ幸せだと思えるんだ。


「ただいまー」


「おかえり、颯斗」


「まだご飯じゃねぇよな。俺2階行ってるわ」


「待って。ちょっと話があるの」


「え?話?なんだよ話って」


「まぁ、座って?......あのね、高校生になったばかりだから言いにくいんだけどね」


なんでそんな真剣そうな顔?

そんなに言いにくいことなのか?

まさか、引っ越すとかじゃねぇよな。


「来週の月曜日にね、この街を出るの」


「...........」


なんで?

なんでそのまさかが本当になるんだよ!


「お父さんの転勤が決まっちゃって、関西に引っ越すの。だから、今週中には荷物まとめて、友達にも引っ越すこと言っておくのよ?」


「冗談だろ?...俺、ここで1人暮らしするから」


「なに言ってんのよ!勝手に決めないで!」


「勝手に決めたのはそっちだろ!俺はぜってぇこの街をはなれたくねぇ」


「なにがなんでも一緒に行くから。絶対に荷物をまとめておいといて」


くそっ。

どうすればいいんだよ。

俺、梨沙と別れるなんて嫌だ。

遠距離は絶対続かない。

別れるしかないのか?

でも、ひとつだけ心に決めたことはある。

絶対に引っ越すことは言わない。

梨沙は絶対泣くと思うから。

だから.........消えたことにしておけばいいんだ。