図書館彼氏【短編】

「どうしよう………このままじゃお家に帰れないよ!」


「どうしましょう。置き傘は全部捨てちゃったし……」


「っう、っう、うわぁーん。っうう、っうう」


「梨沙ちゃん、大丈夫よ。ちゃんと帰れるよ」


今思うとなんで泣いたんだろうって思う。

傘が壊れててもお家に帰れるのにね。

でも、たぶんこの時の私は怖かったんだと思う。

このままじゃお家に帰れないかもしれないとか1人で図書館に残るんじゃないかって考えちゃって。

本当バカだな〜って思う。

そんなバカな私に声をかけてくれた男の子がいた。


「どうしたの?なんで泣いてるの?」


「この子傘が壊れちゃったらしくてね、たぶんお家に帰れないって思って泣いてるんだと思うの」


「そうなんだ。じゃあ、僕の傘貸してあげる!」


「梨沙ちゃん、この男の子が傘貸してくれるって」


「………っうう、本当?……っう」


「うん!はい、どうぞ!」


「ありがとう!」



男の子は傘が2つあるわけじゃなかった。

傘は1つしかなくてその傘を私に貸してくれた。

その男の子は私に傘を貸したあとすぐ帰ってしまった。

傘をささずに………。