「ママ、おねがいがかなったよ」
「ん?」

「パパとなかなおりしたんだね」

ママはじっとけいちゃんを見つめました。

「たったひとつのお願いなのに、そんなことに使っちゃったの」

ママはがっかりした顔をしました。
「だって、だって・・」

けいちゃんの目から大粒の涙があふれてきました。

「ごめん、ごめん。けいちゃん。ママが悪かった。ただ、パパやママのためじゃなくて、自分のために使ってほしかったのよ」

ママの言葉を聞くと、とうとう、けいちゃんは声をあげて泣き出してしまいました。

二人の様子をじっと見ていたパパでしたが、黙っていられなくなりました。

「なんだか俺たち、けいちゃんのことを一番になんて言いながら、自分たちのことしか考えてなかったみたいだな」

パパはしんみりと語ります。

「いつも、みんなで食事ができたらって、他の誰のためでもない、けいちゃんが一番に望んでいる事なんだよ」

「けいちゃん・・・」

ママの目から涙があふれてきました。

「ホントだね。けいちゃんが一番に家族のことを考えているのかもしれないね」

ママはけいちゃんを抱きしめました。

「ありがと、けいちゃん」
「・・・ママ、」 



「遠く空の上から見た地球は、青くて綺麗だったでしょう」
「うん」
けいちゃんは大きく頷きました。

パパは視線を窓の外に向けました。
「ほら、見てみろ。綺麗だぞ」

そこには、夜空にぽっかりと浮かんだ金色の丸い月が、眩しいぐらいに輝いていました。