眠気を誘う太陽の光が照らす空の下を

 暖かい春風によって
 ヒラヒラと靡くように舞い散った
 鮮やかな淡いピンク色の花びらが
 道の脇に落ちていく中、


 大きくてごつごつした男の手に
 細くて色白な指を互いに絡ませ

 足の歩幅を合わせてゆっくりと歩く。







 『王子! …桜がとっても綺麗ですね。』






 少女は満開の桜に向かって

 繋いでいない方の手で
 ピンッと真っ直ぐに指をさし

 そっと静かに微笑む。




 『………』




 王子は少女の言葉に反応せず
 歩いていた場所に突然立ち止まり

 まるで照れを隠すかのように
 口元を手で押さえた。






 『もちろん、王子も桜に負けずに
  とても綺麗…
  いやっ、王子が1番に
  お美しいですからね?!。』





 少女の目には桜の花びらに嫉妬し
 怒ってるかのような姿に映り
 慌てて王子が一番である事を伝える。




 少女の慌てっぷりが
 小動物のような動きで可愛らしく

 王子はえくぼを口の端に2つ出して
 とけそうになる程の笑顔を浮かべて


 ふわっとした少女の髪に触れて
 優しく撫でた。





 『…………一番に綺麗なのは日和だよ。』







 優しく落ち着きのある低い声は
 風に添って耳の中に侵入し
 こだまさせて響きかせる。


 溢れだした笑みが
 桜の花びらと共に舞い散る。




 ひと目合うのが怖くて
 視線を逸らしていると


 王子は手慣れた手つきで
 顎を掴み、クイッと上げて




 『……日和。愛してるよ。』






 恥じらいも無しに愛する言葉を
 消えそうな程小さな声で呟き

 乾いた唇に舌を這わせて息を殺し
 甘くとろけそうな熱い口づけを落とす。




 少女は濡れた目をぎゅっと瞑って
 溢れて行く思いに身を委ねて

 愛の頂上まで駆け登る ━━━━。




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