……さっきの出会いは
こんな出会いだったら良いなと思った
私の強い願望であり、妄想です。
実際は悠馬先輩に助けられたり
話しかけられたりしたわけでは無く
校門の前に大勢の人たがりが
出来ていたので
ほんの出来心で人たがりの中を
そっと顔を出して覗いてみると
私の方を見て優しく
微笑んでいる悠馬先輩が
人の隙間から見えたのが始まり。
その時に見た
悠馬先輩の微笑んでいる姿に
一目惚れをした。
一目惚れしたとは言っても
恋をした相手が
イケメンな人気者で有る限り、
私の恋は100%の確率で"叶う"筈が無い。
例え勇気を振り絞って
思いを悠馬先輩に伝えても
結果は見えている。
それに悠馬先輩を好きなのは
私だけじゃ無い。
悠馬先輩に取り巻く女子全員が
私と同じで恋をしているに違いない。
悠馬先輩に恋をしている皆は
今どきの可愛い人ばっかりで
地味な私が勝てるとは思っていない。
だから私は脳内で
悠馬先輩と付き合う事にした。
脳内であれば失恋した時の辛さや
人気者と付き合った事による
女の嫉妬で恨みを買うことも無く
誰にも迷惑かけずに自
分が幸せになれるのならば
現実で付き合うよりは
断然に良いと思っている。
脳内で妄想をしているうちに
心が虚しくなる時があるのは
正直の話、嘘じゃない。
そうならないように
1日1回は本物の悠馬先輩に会って
脳内で妄想する為に使う
エネルギーを補給をする。
「…よしっ。脳内補給完了。」
今日は初めてKP5のメンバー全員に
会えたので嫌って言うほど
いつもより多く妄想のエネルギーを
補給することが出来た。
…今日も、いっぱい妄想するぞーっ。
「なーにが脳内補給完了じゃ、あほ。」
突然に後ろから男の声が耳に届き、
大きな手のひらで叩かれたような
痛みが後頭部に走った。
「いっ……たぁ。」
後頭部を手で押さえながら
踵を返して後ろを振り返ると
「敦士! 妃星!。」
坂田敦士[サカタ アツシ]という名の男と
松下妃星[マツシタ キアラ]という名の女が
2人仲良く立っていた。
.
