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 空の色がめっきり春めいて
 紫がかったつやつやした色を帯び

 遠山にかかる雲が
 散った桜の形見のように見える光景を


 憧れの高校生になれたことに
 酔いしれ、

 春を感じさせる生暖かい
 太陽の日差しを浴びながら


 ぼーっと眺めて歩いていた。







 『…きゃっ!。』







 学校の校門を目の前にした瞬間。

 春独特の柔らかく生暖かい風が
 足元をなぶって通り過ぎていく。


 突然な風のいたずらのせいで
 スカートを手で抑える暇が無く

 スカートは可憐に腰まで捲り上がった。





 『さっきの見た?。』

 『見た見た。…ピンクの水玉模様!。』

 『あはは。
  普通は水玉模様と言えば
  水色だっつーの!。』





 後ろから野太い男の笑い声が聞こえた。




 …ま、…まさか。



 さっきの風で後ろの男子に
 私の下着を見られちゃった?!。




 ……さ、最悪だぁ。

 もう、日和はお嫁に行けないよぉ…。




 男子に下着を見られたことに対して
 恐怖と恥ずかしさを感じた私は

 動かしていた両足が止まってしまい
 その場に膝を抱えてしゃがみこんだ。







 『クスクス。…あの子可哀想。』

 『まだ入学して間もないのにねぇ。』

 『ねー。』





 大勢の生徒が通う校門の前で

 お気に入りの下着を
 さらけ出してしまったので
 私を見る周りの視線が痛い。




 そんな視線に私は堪えきれず
 体が小刻みに震え始め、目頭が熱い。



 ………もうやだ、誰か助けてよぉ…。







 心の中で助けを求めたその途端。






 『……おい。何、お前等見てんの?。』







 さっきの野太い声とは違う
 落ち着きのある優しい男の声が
 後ろから耳に届いた。





 そんな男の声に誘われたかのように
 体が動き振り返ると


 目の前には肩から流れる長い体が
 特徴的な逞しい背中が見えた。






 ……もしかして、この人
 私のことを助けてくれるの?。




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