「回りは彼を無視するようになるし、彼自身は里美しか愛せなくなるの。後藤稔のハートは、里美の思いのままになるってワケ。願望を達成したいのなら、これを使うとイイよ」


 短刀を手にした里美。稔への思いを益々、強めていた。

「?」


 背後に人の気配を感じた。


 振り返ると、そこにいたのは黒のワンピースを着た椿ちゃんである。


「はーい、調子は如何?」


 驚く事も無く、当たり前のように振る舞う里美。


 傍の鏡台の前に座り込み、鏡に向かって櫛で自分の髪を梳き始めた。


「調子? 上々よ」とクールな眼差しである。


「そっか。それは結構な事だよね? っで? 挙式、ぶっ潰すんだ?」