部屋ごとドサッと落とされて、そのせいで天井に少しだけ隙間ができた。

ニンゲンの足音とクルマの音が離れて行く。

とたんに、虫の声と水音が聞こえた。


にゃー


僕は小さな隙間に向かって精一杯手を伸ばす。

隙間にねじ込んだ手の先を、回したり引っかいたり繰り返して、やっとどうにか頭が通るくらいの穴になった。

その穴に頭を入れたら、もう簡単だ。

スポッと音をたてて、頭が出た。

箱から頭だけを出してみると、いつかお母さんと見た、綺麗な星空が頭の上に広がっている。

グイッと体を出したら、草の中に落っこちた。

右の方には、草の坂道。その下には、広い川。

そんな場所に、僕はひとりぼっち。


にゃー!


お母さんや兄弟を呼んでみても、誰の返事も聞こえない。