「そうかい。覚えてないのかい。10日でもう忘れてしまったかい」


オバサンによると、僕がこの場所にきて10回の昼と夜がすぎたらしい。


「あんたが捨てられたとこ、見てたよ。腹を減らして鳴いてるとこも、寄って行ったニンゲンに追い払われたとこも」


けど、助けないよ。あたしも野良だからね。自分でいっぱいいっぱいなんだ。


オバサンは尻尾をたてて僕から離れていく。

片足を少し引きずっていた。

一度だけ振り向いてくれたけど、僕はこの場所を動かなかった。

動きたくなかった。

動けなかった。


きっと、またニンゲンがきてくれる。


そう信じていた。