「敵ってなぁに?」

「そりゃ一番はニンゲンだよ」

「ニンゲン?」


オバサンは、ニンゲンから逃げるために足音を消せと僕に言う。


「捨てネコとか、あたし達を勝手に呼ぶニンゲンたちさ」


金色の細い目が鋭く光る。


「どうして?僕はニンゲンに捨てネコって呼ばれると嬉しいよ」


たいていの場合、撫でてくれるから。
それにたまには美味しいものもくれる。

昨日のサカナだって、ニンゲンがくれたんだよ。

そう話した僕を、オバサンは片手ではねのけた。


「あんた、バカだね。ニンゲンを信じる奴はバカだ」