「あ、俺もう時間だ!」

私もバイトに行かないと──


急いでグラウンドに向かう遼くんは、さすがサッカー部だけあって足が速い


でも、その後ろ姿を見ていたのはもちろん私だけじゃない


近くにいた女子生徒はやっぱり遼くんを目で追ってはキャーっと叫ぶ


遼くんはこんなにもモテるのに、どうして私なんかが好きなんだろう

未だにわからない




「あの先輩も、ちょっと可愛いからって遼くんに近づきすぎじゃない?」

「ホントー。ってか先輩とかババアじゃん、どこがいいんだろうね」



───これもいつものこと

遼くんは知らないだろうけど、彼が私のところに来るようになってからたびたび言われる陰口

それは先輩後輩関係なく、すれ違えば必ず言われる

だからといって悲しいからと遼くんに言ったりはしない

そしたら、遼くんはきっと、私より傷ついてしまう、自分を責めてしまうから


それに私はそんな陰口に言い返すほど子供じゃない。しょせん、女子のひがみだもん、気にしない

それに間違いだらけだよ、ソレ

私は別に可愛くないし、ババアでもない

年齢だってあなたたちと1つしか変わらないんだから

私と遼くんが周りからどう見えてるかわからないけど、近付いてくるのは明からに私じゃなくて遼くんだと思う